gold (更新: 2026/08/02)

純金積立の売却益計算は「取得費」がカギ──税金の考え方と確定申告の要否を、月3,000円+スポット購入のモデルで試算する

純金積立の売却益計算は「取得費」がカギ──税金の考え方と確定申告の要否を、月3,000円+スポット購入のモデルで試算する

金価格が高値圏にあると、純金積立の残高を見て「一部だけ売ってみようか」と考える瞬間があります。そこで手が止まるのが税金です。

調べ始めると、50万円の特別控除、5年を超えたら半分、総合課税といった言葉が出てきます。どれも間違いではないのですが、実際に自分の口座で計算しようとすると、もっと手前でつまずきます。毎月違う価格で買ってきた金の「取得費」を、どうやって1つの数字にまとめるのか。ここが決まらないと、その先の計算がまったく始まりません。

この記事は、その一点を最後まで通して計算したものです。私は2015年から純金積立を続けていますが、まだ売却したことはありません。売ったらどうなるのかを調べて計算した記録として読んでいただければと思います。金額は私の残高ではなく、これから始める人が再現できる条件でモデルを組みました。

こうじ
こうじ

取得費さえ出せれば、あとは引き算です。難所は最初にあります。


純金積立の税金は、売った金額ではなく「利益」にかかる

売却価格から取得費・譲渡費用・特別控除50万円を引いた残りが課税対象になることを示す図解

まず全体の枠を置いておきます。

課税されるのは譲渡所得。年間の利益のうち50万円までは特別控除で残らない

個人が金地金を売って利益が出た場合、原則として総合課税の譲渡所得になります(国税庁 No.3161)。給与など他の所得と合算して税額が決まる区分です。

計算式はこうなります。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除50万円

売った金額そのものに課税されるわけではありません。かかったコストを引き、さらに年間50万円の特別控除を引いた残りが対象です。金以外にも総合課税の譲渡所得がある年は、その合計に対して50万円という点だけ注意が要ります。

なお、営利を目的として継続的に売買している場合は、譲渡所得ではなく事業所得または雑所得として扱われます。ここでは長期保有した分を売る前提で話を進めます。

給与所得者には、20万円以下なら申告不要になる仕組みがある

会社勤めの人には、確定申告そのものが不要になる場合があります。国税庁の案内(No.1900)では、次の条件がそろったときに原則として確定申告を要しないとされています。

  • 給与等の収入金額が2,000万円以下であること
  • 1か所から給与等の支払を受けており、その給与について源泉徴収と年末調整が行われていること
  • 給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であること

金の売却益でこの20万円を判定するときは、50万円の特別控除を引き、長期なら1/2にした後の金額で見ます。控除前の譲渡益で判断すると、必要以上に厳しく見積もることになります。

注意点が3つあります。

  • 医療費控除などで確定申告をするなら、この20万円以下の所得も併せて申告する。申告しないで済む制度であって、申告から除ける制度ではありません
  • 所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合がある
  • 給与所得者以外にこの制度はない。ただし特別控除を超えただけで直ちに申告が必要とは限らず、ほかの所得や基礎控除も含めて判定する

5年を超えて持っていた分は、課税対象がさらに半分になる

保有期間が5年を超えているかどうかで扱いが分かれます。

区分保有期間計算
短期譲渡所得5年以内譲渡益 − 特別控除
長期譲渡所得5年超(譲渡益 − 特別控除)× 1/2

短期と長期の両方がある年は、特別控除50万円は短期のほうから先に引きます。控除を1/2される長期ではなく、そのまま課税される短期に先に当てる仕組みです。

ここまでが制度の骨格です。問題は、この式に入れる「取得費」をどう出すかでした。


計算でいちばん詰まるのは「取得費」──毎月違う価格で買っているから

保有期間は先入先出法、取得費は総平均法という2つの異なる計算方法を示した図解

純金積立の仕組みそのものは純金積立とは:インフレから資産を守る仕組みで整理しています。純金積立は毎月同じ金額を出して、そのときの価格で買います。10年続ければ120通りの単価が積み上がる計算です。そこから50gだけ売ったとき、どの月に買った分を売ったことになるのか。これが決まらなければ取得費は出せません。

取得費は、買ったときの金額に購入時の手数料を足したもの

取得費には購入代金だけでなく購入時の手数料も含まれます。田中貴金属の積立手数料は次のとおりです。

1ヵ月の積立金額の合計(金・プラチナ・銀)積立手数料率
3,000〜29,000円2.8%
30,000〜49,000円2.2%
50,000円以上1.6%

(田中貴金属 総合口座 よくあるご質問より。表の下限が3,000円で、積立はここから始まります)

会社ごとの手数料の違いは純金積立の会社比較2026で比べています。

この手数料は捨て金ではなく、取得費に積み上がっていく数字です。

一部だけ売ると「どの月に買った分を売ったのか」が決まらない

純金積立で買った金は、顧客ごとに分けて保管されているわけではありません。事業者が複数の顧客分をまとめて預かり、口座の上では重量だけが管理されています。売却しても重量が減るだけで、売った金が「何月に買ったあの金」と物理的に対応しているわけではないのです。

金は元素です。2015年に買った1gと2025年に買った1gに、区別できる違いはありません。個別対応させようがない、というのが実態に近いと思います。

国税庁の文書回答は、この2つを別々の方法で決めている

ここに正面から答えている公的な資料があります。日本金地金流通協会からの照会に対する東京国税局の文書回答(平成18年10月23日)です。照会の対象になった企業には、石福金属興業・田中貴金属工業・徳力本店・住友金属鉱山・三菱マテリアル・三菱商事の6社が名指しで挙がっています。

回答の中身は、次の2点に整理できます。

保有期間は先入先出法で判定し、取得費は総平均法に準ずる方法で計算する。
決めるもの使う方法根拠
どれを売ったか(保有期間)先入先出法(先に買った分から順に売ったとみなす)所得税基本通達33-6の4に準じる
いくらで買ったか(取得費)総平均法に準ずる方法所得税法48条3項・同施行令118条に準じる

この2つが別の方法である点が、いちばん間違えやすいところだと思います。「先に買った分を売った」ことにするのだから取得費もその頃の安い単価を使うのだろう、と考えたくなりますが、そうはなりません。取得費は全期間をならした1つの単価を使い、先入先出法は保有期間の判定にだけ使います。

もう1つ見落とせないのが、この文書回答がスポット購入を明示的に扱っていることです。事実関係の記述に「顧客は、ドルコスト平均法とは別に、同一口座において、金地金を個別に購入することができます」とあります。毎月の積立とスポット購入は同じ預り口座に入り、まとめて総平均法の対象になるという前提で回答が出ています。

ただし、この回答には「東京国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありません」という留保が付いています。2006年の回答でもあります。考え方の筋道を知る材料としては強いものですが、自分の申告に当てはめる段階では所轄の税務署に確認しておくのが確実です。


「平均取得価格」を使えば、取得費の計算そのものは終わる

積立手数料を含んだ平均取得価格に現金化重量を掛けると取得費が求まることを示す計算式の図解

ここまで総平均法の話をしてきましたが、実務では自分で平均を計算し直す必要はありません。

田中貴金属は「平均取得価格 × 現金化重量」を取得費として案内している

公式FAQに、取得費の求め方がはっきり書かれています。

平均取得価格 × 現金化した重量 = 貴金属地金取得費

この平均取得価格は、取引後に郵送される「取引確認書」か、ネットサービスを利用していれば会員専用サイトの取引履歴で確認できます。手元にない場合は、所定の書類を請求すれば取引明細を作成してもらえます。

平均取得価格に含まれるもの・含まれないもの

同じFAQに、平均取得価格の算出範囲も明記されています。

平均取得価格に項目
含まれる積立手数料
含まれない年会費、口座管理料、引出し手数料、バー指定手数料

積立手数料は平均取得価格に織り込み済みです。足し忘れる心配はありません。年会費や口座管理料はこの数字に入っていないため、取得費として扱えるかは別の判断になります。引出し手数料とバー指定手数料は現物を引き出すときの費用で、売却とは別の話です。

平均取得価格では出せないもの

便利な数字ですが、これ1つでは完結しません。平均取得価格から保有期間は分かりません

平均という操作は、いつ買ったかという情報を潰します。1gあたりいくらだったかは残りますが、そのうち何gが5年を超えているかは残りません。先入先出法の判定には、平均取得価格ではなく購入時期の記録が必要です。これは表示が不親切なのではなく、平均という計算そのものの性質です。

購入時期の記録はどこで見られるか

確定申告に証明書類を添付する義務はありませんが、税務署から説明を求められたときに必要になる場合があります。確認できる範囲は利用状況で分かれます。

  • ネットサービスを利用している場合:会員専用サイトの「残高・取引照会」画面で、過去7年間の「月別取引状況」と過去10年間の「取引履歴」を照会できる
  • 利用していない場合:現金化したときに届く「取引確認書」や、毎年1月に届く「残高報告書」を参考資料にできる

紛失時も、所定の書類を請求すれば「月別取引状況」と「取引内容通知書」を送ってもらえます。取得費は平均取得価格で足り、保有期間は取引履歴で追う。この2本立てで揃います。


モデルケースで最後まで計算する──月3,000円の積立とスポット購入10万円

売却量が49gで特別控除、88gで20万円ルール、113gで短期が混ざるという3つの段差を示す図解

数字を入れて通してみます。

前提

  • 期間:2016年1月から2025年12月までの10年間買い続け、2026年6月に売却
  • 積立:3,000円/月を10年間 = 360,000円
  • スポット購入:年1回10万円を10年間 = 1,000,000円
  • 投入合計:1,360,000円
  • 積立手数料:2.8%(3,000〜29,000円の区分)= 10,080円
  • 取得費の総額:1,370,080円

積立手数料は約款上、積立代金とは別に上乗せして引き落とされます。ここでも投入額に加算する形で置きました。

金価格は前半5年(2016〜2020年)の買付価格を6,000円/gで一定、後半5年(2021〜2025年)を11,000円/gで一定と仮定します。売却時の価格は18,000円/gとします。実際の相場をなぞった数字ではなく、計算の筋道を見るための仮定値です。

買えたグラム数は、前半が113.33g、後半が61.82g、合計175.15gになります。同じ金額を出しても、価格が安い時期のほうが多く買えている形です。

総平均法で1gあたりの取得費を出す

1,370,080円 ÷ 175.15g = 約7,822円/g

ここが要点です。前半に買った分の単価は6,000円、後半は11,000円でしたが、申告で使うのは、そのどちらでもない7,822円という1つの数字です。すべてのグラムに同じ取得費が乗ります。

50gを売ったときの税金

18,000円/gで50g売ったとします。

項目金額
売却価格(50g × 18,000円)900,000円
取得費(50g × 7,822円)−391,100円
譲渡益508,900円
特別控除−500,000円
控除後8,900円
長期譲渡所得(1/2)約4,400円

(1gあたり取得費を7,822円に丸めて計算しています。端数の扱いで数十円は前後します)

保有期間は先入先出法で判定します。先に買った113.33gから売ったとみなすので、この50gは2016〜2020年に取得した分にあたります。2026年6月の売却なら、いずれも取得から5年を超えているため長期譲渡所得になります。取得日からちょうど5年の時点はまだ「5年以内」なので、境目の年に売るときは日付を確認しておきたいところです。

90万円を売って、課税対象になるのは約4,400円。ほかに給与・退職所得以外の所得がなく、ほかの理由で確定申告もしない給与所得者であれば、20万円の範囲に収まり申告は発生しません。

申告が必要になる分岐点はどこか

売却グラム数を動かして境目を見てみます。1gあたりの利益は 18,000 − 7,822 = 10,178円です。

  • 特別控除50万円を使い切るのは、約49g(49 × 10,178 ≒ 50万円)
  • 申告不要の範囲に収まる上限は、約88g(長期なので1/2前で40万円まで許容できる)。ほかに給与・退職所得以外の所得がなく、ほかの理由で確定申告もしない給与所得者の場合
  • 113.33gを超えると、超過分は後半に買った分=5年以内となり、1/2が使えない短期譲渡所得が混ざり始める

同じ口座から売っても、49g・88g・113gという3つの段差があります。どこで売るかを決める材料にはなると思います。

手数料を抑えると、取得費も下がる

最後に、少し逆を向いた話をしておきます。

積立手数料10,080円は平均取得価格に織り込まれ、取得費に含まれています。仮にこの手数料がゼロだったとすると、取得費は1,360,000円、1gあたり7,765円に下がります。同じ50gを売ったときの課税所得は約4,400円ではなく約5,900円になります。

つまり手数料を払ったほうが、税金の計算上はわずかに有利に出ます。ただし戻るのは差額に税率をかけた分だけで、税率20%なら300円に届きません。10,080円払って数百円返る、という関係です。

手数料と税金は同じ方向を向いていません。片方を減らすともう片方がわずかに増えますが、桁がまるで違います。この非対称をどう見るかは、数字を見たうえで判断するのがよさそうです。


田中貴金属で積み立てている場合、手元に何を用意するか

売却前にそろえる取引履歴・平均取得価格・現金化重量・200万円超の支払調書という4項目のチェックリスト図解

200万円を超える売却は、業者から税務署へ支払調書が出る

田中貴金属の案内によると、1回の支払金額が200万円を超えた場合、住所・氏名・マイナンバーと取引内容を記載した支払調書が税務署に提出されます。

税額が変わる話ではなく、売った事実が税務署に共有されるという手続きです。申告が必要な水準で売るなら、いずれにせよ申告することになります。

スポット購入の単位と手数料

スポット購入は金額指定なら1,000円以上1,000円単位、重量指定なら1g以上1g単位(銀は100g以上)。購入方法はネット・電話・店舗の3通りで、いずれも購入手数料は無料です。

積立には2.8%の手数料がかかり、スポット購入にはかからない。この差が、買い方を分ける理由になります。

2027年の会員登録必須化との関係

田中貴金属は2027年以降、個人向け貴金属取引で会員登録を必須化すると発表しています。売却も対象のため、手続きの前提が変わる可能性があります。詳細は田中貴金属が2027年以降に会員登録を必須化で整理しています。


現物とETFでは、売ったあとに残る額の決まり方が違う

現物は総合課税で50万円控除と5年超1/2、金ETFは申告分離課税でNISAなら非課税という税制の違いを比較した図解

ここまでは現物の話でした。金ETFは仕組みが別で、売却益は申告分離課税になります。NISA口座で買っていれば課税されません。50万円の特別控除も5年超の1/2もない代わりに、税率が所得水準に左右されないという違いがあります。

ただし税制の有利さだけで決まらないものも残ります。現物は重量が口座に積み上がりますが、ETFは市場価格が基準価額から離れることがあります。この点は金ETFの価格が金より高い?1540で起きた「乖離」の理由純金積立 vs 金ETFで扱っています。


まとめ

平均取得価格から取得費、譲渡益、申告判定へと進む売却益計算の流れを示す図解
  • 純金積立の税金は、売った金額ではなく利益にかかる。年間50万円の特別控除があり、5年超なら課税対象はさらに半分になる
  • 計算の難所は取得費。東京国税局の文書回答では、保有期間は先入先出法、取得費は総平均法に準ずる方法という別々の決め方が示されている
  • 実務では、田中貴金属の平均取得価格 × 現金化重量で取得費が出せる。積立手数料は織り込み済み。ただし保有期間の判定には使えないので、購入時期は取引履歴で追う
  • モデルケース(10年で1,360,000円投入)では、50g売っても課税対象は約4,400円。段差は49g・88g・113gにあった

こうして計算してみると、売却の判断は相場だけで決まっているわけではないことが見えてきます。どのグラムを売ったことになるのか、それが5年を超えているのか。手元にある重量は同じでも、そこに乗っている条件は一様ではありません。

自分の口座では、どのあたりに段差があるのでしょうか。

いつ売るかという判断そのものは金は売り時なのか?で、金全体の基礎は【完全版】金(ゴールド)入門ガイドで扱っています。


よくある質問

確定申告・取得費・一部売却・NISAというよくある疑問4つをまとめた図解

純金積立の利益はいくらから確定申告が必要ですか?

譲渡益から年間50万円の特別控除を引いた金額が残るかどうかが目安になります。給与等の収入金額が2,000万円以下で、1か所から給与を受け源泉徴収と年末調整が行われている場合、給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であれば、原則として確定申告は不要です。長期譲渡所得なら、特別控除を引いて1/2にした後の金額で判定します。ただし医療費控除などで確定申告をする場合は、この20万円以下の所得も併せて申告する必要があります。所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要な場合があります。給与所得者以外にはこの20万円以下の申告不要制度はありませんが、50万円の特別控除を超えただけで直ちに申告が必要になるとは限らず、ほかの所得や基礎控除なども含めて判定します。

取得費がわからない場合はどうなりますか?

田中貴金属の場合、平均取得価格に現金化した重量を掛けた金額を取得費として計算できると案内されています。平均取得価格は取引確認書または会員専用サイトの取引履歴で確認でき、積立手数料は含まれていますが年会費や口座管理料は含まれていません。取引確認書が手元にない場合は所定の書類を請求すると取引明細を作成してもらえます。記録が揃わない場合は所轄の税務署に相談してください。

一部だけ売っても申告は必要ですか?

売却したグラム数に応じた譲渡益が特別控除の範囲に収まっていれば、課税所得は生じません。どの時期に買った分を売ったことになるかは先入先出法で判定するため、保有期間が5年を超えているかどうかも併せて確認します。

純金積立の税金はNISAで非課税になりますか?

純金積立は現物の金地金を買う仕組みで、NISAの対象外です。NISAで非課税になるのは、証券口座で買う金ETFなど対象商品に限られます。

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