金ETFの価格が金より高い?1540で起きた「乖離」の理由と、1326との違いを実データで比較
2025年10月17日、東京証券取引所が金ETFについて注意喚起を出しました。1540の市場価格が、基準価額(一口あたりの純資産額)より1割以上高い水準で取引されている、という内容です。
あのとき実際に何が起きていて、その後どうなったのか。三菱UFJ信託銀行が公開している1540の上場来データと、SPDRが公開している1326の東証上場分のデータを両方ダウンロードして、金1gあたりの単価に揃えて計算し直してみました。
先に、わかったことを挙げます。
- 乖離のピークは注意喚起の翌営業日、2025年10月20日の +16.24%
- そこから4営業日で +0.71% まで戻っている
- 2026年は向きが逆転し、8月7日までの146営業日のうち133日がマイナス乖離。年初来の平均は -1.49%(8月7日は -1.47%)
- その急騰週、同じ東証に上場している1326は跳ねていなかった。10月17日には金1gあたり1540が24,975円、1326が21,000円と、約19%の開きが付いている
- いまは両方とも指標価格より1%前後低く、1326と1540の差は0.3%以内に収まっている
「乖離はETFの宿命だから仕方ない」という説明をよく見かけます。ただ同じ取引所で比べてみると、同じ金を裏づけにした商品でも、ズレ方には差がありました。
私は1326をNISA口座で保有しています。1540のほうは持っていないので、以下は公開データを読んで計算した範囲の話として読んでいただければと思います。
数字はすべて出典を付けます。自分で確かめられる形にしておきたいので。
まず「乖離」とは何と何のズレなのか
言葉の定義から置いておきます。ここを曖昧にしたまま数字を見ると、意味を取り違えます。
基準価額は「1gあたり」ではなく「1口あたり」
東証の注意喚起には、2025年10月16日時点で1540の基準価額19,604.9円、市場価格22,395円と書かれています(東京証券取引所「純金上場信託(現物国内保管型)、純プラチナ上場信託(現物国内保管型)」に関する注意喚起)。
この19,604.9円は、金1gの値段ではなく、ETF1口あたりの純資産額です。1540は上場した2010年時点で1口=金1gでしたが、現在は1口=1gではありません。
1口あたりの金の量は、毎日わずかに減っている
三菱UFJ信託銀行のサイトには、1口あたりの貴金属の質量が毎日掲載されています。2026年8月7日時点で、1540の1口は金0.9337989gです。
減っている理由は、信託報酬や信託にかかる費用を、現金ではなく信託財産の金そのものを売って賄っているからです。同社の説明でも、上場時は1口=1g(金・プラチナ)で組成されたが費用に充てるため日々減少する、と明記されています。
数字で確かめてみます。
| 上場時の1口 | 直近の1口 | 経過 | 減少率 | 年率換算 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1540 | 1g | 0.9337989g(2026/8/7) | 約16.1年 | −6.62% | 約0.42%/年 |
| 1326 | 0.1トロイオンス | 0.09173472トロイオンス(2026/8/6) | 約21.7年 | −8.27% | 約0.39%/年 |
1540の信託報酬は年0.440%、1326は年0.40%です。減り方の年率が、ほぼ信託報酬の水準と一致しています。ETFの保有コストが実際にどう引かれているのかが、口数あたりの質量という物理量に現れている形です。
「コストは目に見えない」とよく言われますが、金の重さとして見えているのがこの商品の面白いところです。
乖離=取引所で付いた値段 ÷ 一口あたり純資産額
以下、この記事で「乖離」と呼ぶのは、東証の終値を一口あたり純資産額で割った差です。プラスなら基準価額より高く買われている状態、マイナスなら安く放置されている状態を指します。
この取り方は三菱UFJ信託銀行の発表と揃えてあります。同社が示した「東証終値 1口当たり19,000円、基準価額17,342.19円(乖離率:9.56%)」という数字は、19,000 ÷ 17,342.19 − 1 の計算です。
金ETFの仕組みそのものは別記事で扱っています。
2025年10月に何が起きたのか──日付ごとの実データ
三菱UFJ信託銀行が公開しているヒストリカルデータには、2010年7月2日の上場日以降の東証終値と一口NAVがすべて入っています。そこから乖離を計算し直したのが次の表です。
| 日付 | 東証終値 | 一口NAV | 乖離 |
|---|---|---|---|
| 2025/10/15 | 21,050円 | 19,350.21円 | +8.78% |
| 2025/10/16 | 22,395円 | 19,604.90円 | +14.23% |
| 2025/10/17 | 23,400円 | 20,553.99円 | +13.85% |
| 2025/10/20 | 22,525円 | 19,377.21円 | +16.24% |
| 2025/10/21 | 21,635円 | 19,979.59円 | +8.29% |
| 2025/10/22 | 20,255円 | 19,172.50円 | +5.65% |
| 2025/10/23 | 19,510円 | 19,074.82円 | +2.28% |
| 2025/10/24 | 19,280円 | 19,143.97円 | +0.71% |
注意喚起が出たのは10月17日です。ピークはその翌営業日の10月20日、+16.24%。そして10月24日には +0.71% まで戻っています。ピークから4営業日でした。
同じことが2024年4月にも起きている
このパターンは初めてではありません。東証は2024年4月17日にも同じ趣旨の注意喚起を出しています(このときの対象は1540と1542=純銀)。4月16日時点で基準価額11,160.76円に対し市場価格12,275円、乖離は +9.98% でした。同じデータで前日の4月15日を見ると +12.52% です。
一方で、2023年の1年間は乖離の最大値が +0.62%、中央値は +0.15% でした。常時ズレる商品というより、何かが詰まったときにだけ大きくズレる商品という見え方になります。
2023年は最大でも +0.62%、詰まると10%超。振れ幅の桁が違います。
なぜズレるのか──1540で口数が増える仕組み
市場価格は、株式と同じく取引所で買い手と売り手の値段が一致したところで決まります。金価格が上がっている局面では買い注文が先行し、市場価格だけが押し上げられます。
一般的なETFでは、このズレを指定参加者(AP)と呼ばれる機関投資家が、現物を運用会社に差し入れて新しい口数を作ることで埋めます。ただし1540は、その一般型とは契約の形が違います。
1540の目論見書には、「本信託は、投資信託ではありません」と書かれています。発行者は2社連名で、受託者が三菱UFJ信託銀行株式会社、委託者は現在のところ三菱商事株式会社です。そして受益権の口数が増えるのは、委託者が金地金を受託者に追加信託したとき(信託契約 第6条)。受託者のほうは信託財産の運用を行いません。
委託者は1社に固定されているわけではなく、受託者が認めた者が追加信託を行うことで新たに委託者に加わることもできる、と契約に書かれています(第24条)。いまその立場にいるのが三菱商事1社、という状態です。
同じ目論見書のリスク説明には、取引市場における流動性は委託者による追加信託の有無および程度に影響を受ける、と書かれています。口数を増やせるかどうかが、市場での値段の付き方に効いてくる構造です。
公式発表は何と言っていたか
三菱UFJ信託銀行は2025年10月1日に、この乖離についてのお知らせを出しています。書かれているのは次の3点です。
- 本来は取引所価格が基準価額に収斂するものだが、買いが極めて優勢となっているため、取引所価格が基準価額に比して高い状態で推移している
- 9月30日時点の乖離は、東証終値19,000円に対し基準価額17,342.19円(乖離率 9.56%)
- 随時追加設定の申込を受け付けており、管理会社として申込受付を停止している事実はない
公式発表から読めるのはここまでです。買いの勢いに対して口数を増やす速さが追いつかなかった、というのが私の読みですが、国内の金地金の調達そのものが詰まっていたという記述は見当たりませんでした。
口数が増える速さが追いつかないと、値段を戻す力が弱くなるということですね。
金の総量という前提も置いておきます。ワールド ゴールド カウンシルの集計では、2025年の鉱山生産は3,671.6トン、リサイクルを含めた総供給は5,002.3トンです。年間で無限に湧いてくるものではないので、需要が短期間に集中したときに現物を用意する速度が追いつかない場面は、原理としては起こり得ます。
いま起きているのはプラス乖離ではなく、マイナス乖離
2025年10月の話は過去のもので、現在の1540は逆方向にズレています。
2026年8月7日時点で、取引所価格20,340円に対し基準価額20,642.56円。乖離は −1.47%です。
年初からの全営業日を数え直すと、1月1日から8月7日までの146営業日のうち133日がマイナス乖離でした。年初来の平均は −1.49%、もっとも深かったのは3月17日の −3.88% です。
プラス側に出た13日は、すべて1月と2月に固まっています。最大は2月4日の +1.66% でした。そして5月1日以降の67営業日はすべてマイナスで、平均は −1.73%。向きが変わったのは春先だとわかります。
同じ商品が、10か月のあいだに+16%から−3.9%まで行き来しているわけですね。
同じ東証で1326と比べる──グラム単価に揃えて
「乖離はETFという仕組みの宿命」なのだとしたら、同じ東証に上場しているもう一方の金ETFでも、似たことが起きているはずです。ここが本題です。
まず比べ方をそろえます。1540と1326は1口の中身が違うので、口数あたりの値段のままでは比較になりません。両方の東証終値を金1gあたりの単価に換算しました。1540は1口あたりの質量で割り、1326は1口あたりのトロイオンス数を31.1034768倍してから割っています。1326側の東証終値と1口あたりのオンス数は、SPDRが公開している東証上場分のヒストリカルデータから取りました。
物差しには指標価格(大阪取引所の金先物から算出される円/g)を置きます。1540の一口あたり純資産額をグラムに直すとこの指標価格に一致するので、指標価格との差は、そのまま先ほどまで見てきた乖離と同じ数字になります。
急騰した2025年10月、1326は跳ねていなかった
1540が +16.24% を付けた、まさにその8営業日です。
| 日付 | 指標価格(円/g) | 1540(円/g) | 1326(円/g) |
|---|---|---|---|
| 2025/10/15 | 20,652 | 22,466(+8.78%) | 20,368(−1.38%) |
| 2025/10/16 | 20,924 | 23,902(+14.23%) | 20,521(−1.92%) |
| 2025/10/17 | 21,937 | 24,975(+13.85%) | 21,000(−4.27%) |
| 2025/10/20 | 20,682 | 24,042(+16.24%) | 20,494(−0.91%) |
| 2025/10/21 | 21,325 | 23,092(+8.29%) | 21,089(−1.11%) |
| 2025/10/22 | 20,464 | 21,619(+5.65%) | 20,223(−1.18%) |
| 2025/10/23 | 20,360 | 20,825(+2.28%) | 20,181(−0.88%) |
| 2025/10/24 | 20,434 | 20,579(+0.71%) | 20,097(−1.65%) |
同じ日・同じ取引所・同じ1gで比べて、これだけ開いていました。開きがもっとも大きかったのは10月17日で、1gあたり1540が24,975円、1326が21,000円。1540のほうが約19%高い値段が付いています。
1326側は、8営業日すべてで指標価格を下回ったままでした。振れ幅は −0.88%〜−4.27% で、指標価格を上に抜けた日はありません。2025年を通して見ても、1326の東証終値が指標価格を上回った日は一日もありませんでした(もっとも高い日で −0.01%)。金価格そのものが急騰していた週に、1540だけが物差しの上へ大きく抜けていった、という形です。
同じ取引所で、同じ金1gの値段が19%も違う日があったというのが、いちばん効く数字だと思います。
いまは、1326も1540もほぼ同じ位置にいる
直近も同じやり方で比べてみます。
| 日付 | 指標価格(円/g) | 1540(円/g) | 1326(円/g) |
|---|---|---|---|
| 2026/8/3 | 20,706 | 20,550(−0.76%) | 20,492(−1.03%) |
| 2026/8/4 | 20,844 | 20,625(−1.05%) | 20,566(−1.33%) |
| 2026/8/5 | 21,435 | 21,155(−1.31%) | 21,127(−1.44%) |
| 2026/8/6 | 21,852 | 21,557(−1.35%) | 21,589(−1.20%) |
この4日は、1326と1540の差が0.3%以内に収まっています。そして両方とも、指標価格より1%前後低いところにいます。
いま見えているマイナスは、1540に固有の問題というより東証で金ETFに付いている値段の水準そのものを映しているように読めます。2026年1月から8月6日までを平均すると、指標価格に対して1540が −1.49%、1326が −1.91%。マイナス幅は、むしろ1326のほうが大きいくらいです。
ただし1326はドル建ての金価格をもとにした銘柄なので、円に直す時点の為替がどこで織り込まれるかで見え方が変わります。マイナス側の差については、ここは断定できるところではありません。
単位をそろえて比べると、別々に見ていたときとは違う絵が出てくることがあります。
補強:本家のニューヨーク市場でも跳ねていなかった
1326の中身であるGLDは、米国のNYSE Arcaにも上場しています。SPDRが公開しているそちらのデータでは、売買気配の仲値と理論価値の差は2025年10月で最大 +0.05%・最小 −0.15% でした。1540が東証で16%のプレミアムを付けていた時期に、本家の市場でも大きなズレは起きていません。
こちらは市場も時刻も違う数字なので、東証の比較と同列に扱って優劣を測るものではありません。東証で見えた絵と同じ向きだった、という補強として置いておきます。
仮説:口数を増やす材料をどこから引いてこられるか
なぜこうなるのか。両者の設計を見比べると、輪郭が見えてきます。
| 1326 SPDRゴールド・シェア | 1540 純金上場信託(現物国内保管型) | |
|---|---|---|
| 東証上場日 | 2008年6月30日 | 2010年7月2日 |
| 分類 | 外国籍ETF・商品現物型 | 内国・商品現物型 |
| 連動対象 | 金地金価格(LBMA金価格)を円換算 | 大阪取引所の金先物から算出する指標価格(円/g) |
| 金の保管 | ロンドン(カストディアン:JPMorgan Chase Bank, N.A./HSBC Bank plc) | 国内 |
| 信託全体の金 | 1,014.72トン(2026/8/6) | 約69.3トン(2026/8/7) |
1326の裏側にある信託が持つ金は1,014.72トン、1540は約69.3トンです(1540の理論質量69,343,533gから換算)。約15倍の差があります。
そして1326の裏にあるGLDの設定・交換は、ロンドンの金地金市場とニューヨーク市場という、世界でもっとも厚い場所で行われます。1540の追加信託は国内の金地金で完結します。口数を増やす材料を、どれだけ広い場所から引いてこられるか。ここが効いているのではないか、というのが数字を突き合わせて私が立てた仮説です。
国内保管は1540の特長として説明されることが多いのですが、そのぶん調達先が国内に限られるという裏側もあるわけですね。
ただし「東証での売買代金」は1540のほうが桁違いに多い
規模の話をすると、逆の数字も出てきます。東京証券取引所が毎日公表している株式相場表から、2026年8月の4営業日を拾ってみました(立会・普通取引の売買代金)。
| 日付 | 1540 | 1326 |
|---|---|---|
| 2026/8/3 | 96.1億円 | 6.3億円 |
| 2026/8/4 | 32.8億円 | 2.5億円 |
| 2026/8/5 | 28.0億円 | 4.2億円 |
| 2026/8/6 | 60.1億円 | 7.5億円 |
| 4日合計 | 217.1億円 | 20.5億円 |
この4営業日に東証で売買された金額は、1540が1326の約10倍でした。売買代金は買いと売りの両方を合わせた金額で、個人か機関投資家かの区別もありません。ここから言えるのは、東証での取引の活発さでは1540が大きく上回っている、というところまでです。
つまり「流通量」という言葉は、どちらを指すかで答えが逆になります。
- ファンドが抱える金の量で見れば、1326(1,014.72トン)が1540(約69.3トン)を大きく上回る
- 東証での売買代金で見れば、1540が1326を約10倍上回る
売買代金が多いことと、基準価額どおりの値段が付くことは、どうも別の話です。1540はこの4営業日で見れば東証で1326の約10倍の金額が売買されている銘柄ですが、2025年10月には16%のプレミアムが付きました。東証での売買が活発なこと自体は、基準価額とのズレを防ぐ力にはなっていないように見えます。
「よく売買されている=価格が正しい」とは限らない、というのがここでの学びでした。
信託報酬・保管方式・NISAを3軸で比べる
判断材料になりそうな項目をまとめておきます。
| 項目 | 1326 | 1540 |
|---|---|---|
| 信託報酬(年率) | 0.40% | 0.440%(税抜0.40%) |
| 売買単位 | 1口 | 1口 |
| 連動対象 | LBMA金価格(ドル建て)を円換算 | 大阪取引所の金先物から算出する指標価格(円/g) |
| 金の保管場所 | ロンドン | 国内 |
| 現物との交換 | 個人投資家の交換制度なし | 1kg以上5kg以内で可能 |
| NISA成長投資枠 | 対象(2024年1月4日から) | 対象(2024年1月4日から) |
| 東証マーケットメイク制度 | 対象 | 対象 |
実際に負担する信託報酬は、1326が年0.40%、1540が年0.440%で、1326のほうが0.04ポイント低いです。100万円を1年持って400円ほどの差になります。1540の0.440%は税込の表示で、税抜きでは0.40%です。
NISAの成長投資枠については、日本取引所グループが公表している対象銘柄一覧(2026年5月22日時点)に、1326も1540も対象として記載されています。どちらも対象になった日は2024年1月4日です。実際に買えるかどうかは利用している証券会社の取扱いによります。
なお1326は連動対象がドル建てなので、円建てで見ると為替の影響が価格に乗ります。1540は大阪取引所の円建て先物価格から算出した指標価格に連動します。どちらも最終的には円で買って円で売るので為替から逃れられるわけではありませんが、値動きの見え方は変わります。
1540の「現物と交換できる」はどこまで現実的か
1540の特長としてよく挙がるのが、受益権を金地金の現物に交換できる点です。条件を三菱UFJ信託銀行の案内で確認しました。
交換の単位は1kgから
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 小口転換 | 1kg以上5kg以内・1kg単位 |
| 大口転換 | 30万口以上を保有する投資家が対象 |
| 必要口数(金1kg) | 1,071口(2026年8月7日時点) |
| 口数の計算基準 | 転換受付日の基準価額(取引所価格ではない) |
かかる費用
| 費目 | 金額(税込) |
|---|---|
| 事務取扱手数料 | 申込1回あたり5,500円 |
| 金地金改鋳費用相当額 | 1kgあたり22,000円 |
| 地金送料相当額 | 1kg 21,590円/2〜3kg 21,990円/4〜5kg 25,940円 |
| 消費税・地方消費税相当額 | 転換価格の10%(別途) |
上の3つは合わせて5万円弱です。効いてくるのは最後の消費税で、2026年8月7日の基準価額(20,642.56円)で1,071口=金1kgを計算すると転換価格は約2,210万円、その10%は約221万円になります。
さらに、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、推定される譲渡所得にあたる金額も申込時に支払う必要があると案内されています。証券会社が独自の手数料を定めている場合もあります。
「交換できる」は事実ですが、入口は金1kgです。数万円から積み上げていく使い方とは、だいぶ距離があります。
現物を手元に持つこと自体が目的なら、純金積立から現物を引き出す道もあります。買い方そのものの比較はこちらで整理しています。
税金は、現物とETFでルートが分かれる
売ったあとに何が残るかも、判断材料としては大きいところです。
金ETFの売却益は申告分離課税で、税率は20.315%(所得税15.315%・住民税5%、2037年12月31日までの譲渡)です。給与など他の所得と合算されないため、所得水準によって税率が変わりません。NISA口座で保有していれば売却益は非課税です。
一方、純金積立や金地金といった現物の売却益は総合課税の譲渡所得になります。年間50万円の特別控除があり、保有が5年を超えていれば課税対象がさらに半分になる代わりに、他の所得と合算されます。
50万円の控除と5年超の1/2があるのは現物のほう、税率が一定でNISAが使えるのはETFのほう。どちらが有利かは、売る金額と自分の所得によって入れ替わります。現物側の計算は、取得費の出し方から確定申告の分岐点まで別記事で試算しました。
まとめ
- 2025年10月の1540の乖離は、ピークが10月20日の +16.24%。10月24日には +0.71% まで戻っている
- その急騰週、同じ東証の1326は跳ねていなかった。10月17日は金1gあたり1540が24,975円、1326が21,000円で約19%の開き。1326は8営業日すべてで指標価格を下回ったまま
- 2025年を通して、1326の東証終値が指標価格を上回った日は一日もない(最高で −0.01%)。同じ期間に1540は +16.24% まで跳ねた
- 1540で口数が増えるのは、委託者(現在は三菱商事)が金地金を追加信託したとき。一般のETFで指定参加者が現物を差し入れる形とは、契約のつくりが違う
- 公式発表が乖離の背景として挙げているのは「買いが極めて優勢」だったこと。追加設定の受付は停止されていなかった
- 東証での売買代金は1540が1326の約10倍。ただし信託が抱える金の量は1326が1,014.72トン、1540が約69.3トン。「流通量」はどちらを指すかで答えが逆になる
- 信託報酬は1326が0.40%、1540が0.440%で、1326のほうが0.04ポイント低い。負担は1口あたりの金の量が減る形で現れていて、実データの減り方も年0.4%前後と一致していた
- 2026年は146営業日のうち133日がマイナス乖離(年初来平均 −1.49%・8月7日で −1.47%)。いまはグラム単価で見ると1326のほうがむしろ深く沈んでいる(1326 −1.91%/1540 −1.49%)
- 1540の現物交換は1kgから。転換価格の10%の消費税が別途かかる
- NISA成長投資枠は両方とも対象。売却益への課税は現物と金ETFで方式が分かれる
こうして比べてみると、「どちらが優れているか」より先に、自分がどの数字を気にしているのかを決める必要がありそうです。保管場所なのか、コストなのか、いつでも基準価額どおりの値段で売れることなのか。
ちなみに私は、1326をNISA口座で持ちつつ、田中貴金属の純金積立を2015年から続けています。理由を後から言葉にするなら、両方の弱点が同じ方向を向いていなかったから、というのが近いのだろうと思います。
あなたが金ETFに求めているのは、値段の正確さでしょうか。それとも、いざというときに手元に引き出せることでしょうか。
よくある質問
1540の乖離率はどこで確認できますか?
三菱UFJ信託銀行「金の果実」シリーズのサイトのトップページに、取引所価格(東証終値)、基準価額(一口あたり純資産額)、両者の乖離状況が毎営業日掲載されています。同サイトのデータ・レポート内「ヒストリカルデータ」からは、2010年の上場日以降の東証終値・指標価格・一口NAV・小口転換必要口数などを収めたファイルをダウンロードできます。
2025年10月の乖離はどれくらいで解消しましたか?
三菱UFJ信託銀行の公開データから東証終値と一口NAVの差を計算すると、乖離は2025年10月20日の +16.24% がピークで、10月21日 +8.29%、10月22日 +5.65%、10月23日 +2.28%、10月24日 +0.71% と推移しています。ピークから4営業日で1%未満まで縮小しました。
1326と1540では、どちらのほうが基準価額とのズレが小さいですか?
2025年10月の急騰局面では大きな差が出ました。両銘柄の東証終値を金1gあたりの単価に換算して指標価格と比べると、1540は10月20日に+16.24%まで上振れした一方、1326は同じ8営業日すべてで指標価格を下回ったままでした。10月17日には1gあたり1540が24,975円、1326が21,000円と約19%の開きがありました。2025年を通して、1326の東証終値が指標価格を上回った日は一日もありません。ただし2026年1月から8月6日までの平均では、指標価格に対して1540が−1.49%、1326が−1.91%で、マイナス側のズレは1326のほうが大きくなっています。
1326と1540では信託報酬はどちらが低いですか?
1326が年0.40%、1540が年0.440%で、1326のほうが0.04ポイント低いです。1540の0.440%は税込の表示で、税抜きでは0.40%になります。なお両銘柄とも、信託報酬などの費用は現金ではなく信託財産の貴金属を売却して賄われるため、1口あたりの金の量が日々わずかに減っていく形で負担しています。
1326と1540はどちらもNISAで買えますか?
日本取引所グループが公表している「NISAの成長投資枠の対象銘柄」の一覧(2026年5月22日時点)では、1326も1540もいずれも成長投資枠の対象で、対象となった日はどちらも2024年1月4日と記載されています。実際に買えるかどうかは利用している証券会社の取扱いによります。
1540は本当に金の現物と交換できますか?
三菱UFJ信託銀行の案内では、小口転換は1kg以上5kg以内・1kg単位と定められています。必要な受益権口数は転換受付日の基準価額に基づいて計算され、2026年8月7日時点では金1kgあたり1,071口です。費用は事務取扱手数料5,500円、金地金改鋳費用相当額22,000円/kg、送料21,590円(1kgの場合)に加えて、転換価格の10%にあたる消費税・地方消費税相当額を別途支払う必要があります。