金はどこで採れる?世界の鉱山・採掘量とあと何年掘れるか
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私たちの手元にある金は、いったいどこから来たのでしょうか。
金(ゴールド)という元素は、地球が生まれるよりもはるか前、宇宙のごく限られた極端な現象――超新星爆発や中性子星どうしの衝突――のなかで合成されたと考えられています。そうしてできた金が、太陽系の材料に混ざり込み、地球に取り込まれ、長い地質の時間を経て一部が地表近くに濃集しました。今日、鉱山で掘り出している金は、その「濃集した跡」をたどっている作業にほかなりません。
つまり地球は金を新しく作り出せません。掘れる金の総量には、最初から上限があります。
この記事では、その金がどこで採れ、どれだけ採られ、どのように再利用され、そしてあと何年掘れるのかを、最新の統計をもとに整理します。
金は地球のどこに集まっているのか

金は、地殻にはごくわずかしか含まれていません。岩石1トンあたり平均で数ミリグラム程度。これではとても採算が合いません。
採掘の対象になるのは、何らかの地質作用によって金が局所的に濃集した「鉱床」です。金の鉱床は、でき方によっていくつかのタイプに分けられます。
| 鉱床のタイプ | 金の集まり方 | 代表的な産地 |
|---|---|---|
| 熱水鉱脈型 | 地下の熱水が岩の割れ目に金を沈殿させる | 南アフリカ、日本(菱刈) |
| 斑岩型(銅金) | 巨大な銅鉱床に金が随伴する | チリ、米国、インドネシア |
| 漂砂鉱床 | 川に流された金が砂礫にたまる | アラスカ、かつてのカリフォルニア |
| 火成・化石燃料鉱床 | 金はほとんど含まない | ― |
現代の大規模な金鉱山の多くは熱水鉱脈型と斑岩型です。一方、19世紀のゴールドラッシュで人々が砂金を探したのは漂砂鉱床でした。砂金は川底でそのまま拾えるため、技術がなくても採れたのです。
金は「どこにでも薄く」存在しますが、採算が取れるほど集まっている場所は限られています。
採掘現場の金の含有量
実際の金鉱石に含まれる金は、平均すると1トンあたり1〜5グラムほどです。結婚指輪1個分(約5グラム)の金を得るために、1トンの岩を砕いて選り分ける――それが採掘の実情です。
ただし例外的に高品位な鉱床もあります。次に見る日本の菱刈鉱山は、その代表格です。
日本で今も金が採れる場所――菱刈鉱山

日本にも、現役の金鉱山があります。鹿児島県伊佐市の菱刈鉱山(住友金属鉱山)です。
菱刈鉱山の鉱石は、平均で1トンあたり約20グラムの金を含みます(出典:住友金属鉱山「菱刈鉱山」)。世界の主要鉱山の平均が1トンあたり数グラムであることを思えば、その約10倍という品位は世界最高水準です。1985年の出鉱開始から採掘が続き、これまでの累計産金量は260トンを超えています(出典:Japan Gold「The Hishikari Gold Mine」)。
「日本では金が採れない」というイメージとは裏腹に、品位という1点においては、日本は世界の最前列にいます。坑道は一般公開されておらず、見学はできませんが、いまもこの地下で金が掘られているという事実は、知っておいてよいのではないでしょうか。
世界の産金国ランキング(2024年)

世界全体では、2024年に約3,280トンの金が鉱山から採掘されました(出典:USGS Mineral Commodity Summaries 2026)。主な産金国は次のとおりです。
| 順位 | 国名 | 2024年産出量(トン) |
|---|---|---|
| 1 | 中国 | 377 |
| 2 | ロシア | 310 |
| 3 | オーストラリア | 284 |
| 4 | カナダ | 200 |
| 5 | 米国 | 163 |
| 6 | ガーナ | 149 |
| 7 | メキシコ | 140 |
| 8 | カザフスタン | 130 |
| 9 | ウズベキスタン | 129 |
| 10 | ペルー | 108 |
中国が首位で、ロシア・オーストラリア・カナダ・米国が続きます。上位5か国を合わせても、世界全体の約4割にとどまります。石油などと違い、金の産出は特定の国に極端には偏っていません。これは、金鉱床が世界各地の異なる地質環境で形成されうることの反映です。
なお米国の産金は、その大半がネバダ州に集中しています(出典:同USGS)。地質が金を選ぶため、産地は国というより特定の地域に集まります。
あと何年、金は掘れるのか

「金はいつ掘り尽くされるのか」――よく問われるテーマです。素朴に計算してみましょう。
USGSは、現時点で経済的に採掘可能な金(埋蔵量)を世界で約66,000トンと推定しています(出典:同USGS)。これを年間採掘量の約3,280トンで割ると、
66,000 ÷ 3,280 ≒ 約20年という数字が出ます。「あと20年でなくなる」と聞くと不安になるかもしれません。
しかし、この計算には注意が必要です。ここでいう「埋蔵量(reserves)」とは、今の価格・今の技術で採算が合う分だけを指す数字だからです。地中に存在する金の総量(資源量)はこれよりずっと多く、World Gold Councilの整理では約132,000トンとされています(出典:World Gold Council「Are we running out of gold?」)。
材料の分野で「採算が合うか」は、価格と技術次第で動きます。金価格が上がれば、これまで採算割れだった低品位の鉱床が「埋蔵量」に組み入れられます。探査が進めば新しい鉱床も見つかります。実際、埋蔵量の推定値は何十年も掘り続けながら、ほぼ横ばいで推移してきました。掘った分だけ、新たに埋蔵量へ計上され続けてきたのです。
ですから「約20年」は「20年で枯渇する」という意味ではなく、「今の条件で見える在庫」のスナップショットにすぎません。とはいえ、地球が金を新しく作れない以上、総量に上限があることもまた事実です。この上限が、金という資産の価値を支える物理的な土台になっています。
金(ゴールド)を長く保有してきた立場から言えば、気にすべきは「いつ枯渇するか」ではなく、増やせない金属を、必要な分だけ手元に置けるかということなのかもしれません。
採掘から精錬まで――水銀と環境の問題

金鉱石から純金になるまでには、いくつもの工程があります。
- 採掘:地下または露天掘りで鉱石を取り出す
- 破砕・選鉱:鉱石を砕き、金の多い部分を濃縮する
- 抽出・精錬:薬剤で金を溶かし出し、金属として回収する
- 鋳造:純度99.99%のインゴットに仕上げる
このうち、環境面で問題になりやすいのが抽出の工程です。
大規模鉱山では、金を溶かし出すのにシアン化法が広く使われてきました。シアン化合物は猛毒ですが、管理された設備のなかで分解・無害化されます。
より深刻なのは、規制の届きにくい小規模・違法な採掘で使われる水銀です。砂金に水銀を混ぜると金が取り込まれ(アマルガム化)、これを加熱すれば金だけが残ります。簡単ですが、蒸発した水銀蒸気が作業者の健康をむしばみ、河川や魚を汚染します。人為的な水銀汚染の最大の発生源のひとつが、この零細金採掘だとされています。
近年は、シアンや水銀に頼らず微生物に金を溶かし出させるバイオリーチングなど、環境負荷の小さい手法の研究も進んでいます。手元の金は美しくとも、その背後にある工程は、まだ理想からは遠いところにあります。
もうひとつの金山――都市鉱山

採掘で得られる金が地下からの資源だとすれば、もうひとつの供給源は、私たちが使い終えた機器のなかにあります。都市鉱山(Urban Mining)です。
スマートフォンやパソコンの基板には、接点の導電性を確保するために少量の金が使われています。これを回収して再び使う――それが都市鉱山の考え方です。
驚くのは、その含有量です。スマートフォン1トン(約1万台分)から、約200〜300グラムの金が回収できるとされます(機種・世代・回収条件で大きく変わります)。1トンあたり数グラムという天然鉱石と比べれば、桁違いの高品位です。皮肉なことに、最も金の濃い「鉱床」は、いまや私たちの引き出しの中にあるのかもしれません。
日本の都市鉱山に眠る金は、推定で約6,800トンとされます(古くから広く引用されてきた推計値です)。これは世界全体の埋蔵量の1割を超える量で、産出国を持たない日本が、別の形で金の保有国になっていることを意味します。
ただし、リサイクル金のすべてが都市鉱山由来というわけではありません。2024年の世界の金供給は約4,975トンで、そのうちリサイクル金は約1,370トン・約28%でした。記録的な金価格がリサイクル増を後押しした結果です。もっとも、このリサイクルの大半は中古ジュエリーなどの売り戻しであり、電子機器(都市鉱山)由来は一部にとどまります(出典:World Gold Council Gold Demand Trends 2024)。都市鉱山はまだ供給の主役ではなく、これから重みを増していく供給源だと捉えるのが正確でしょう。
回収のプロセスは採掘とよく似ています。機器を砕いて金属を分け、溶解・電解、あるいはバイオリーチングで金を選び出す。技術が進むほど効率は上がり、都市鉱山は持続可能な供給源として年々重みを増しています。
よくある質問

Q. 金はあと何年で掘り尽くされる?
USGSの埋蔵量(約66,000トン)を年間採掘量(約3,280トン)で割ると約20年分にあたります。ただしこれは「今の価格と技術で採算が合う分」であり、価格上昇や探査・技術進歩で埋蔵量は更新され続けます。実際、推定埋蔵量は数十年にわたりほぼ横ばいです。「20年で枯渇」と単純化はできません。
Q. 日本で今も金が採れる場所は?
鹿児島県伊佐市の菱刈鉱山(住友金属鉱山)が日本唯一の現役金鉱山です。鉱石1トンあたり約20グラムという世界最高水準の品位で、1985年から採掘が続いています。坑道の一般見学はできません。
Q. スマホ1トンから金はどれくらい回収できる?
約1万台分にあたるスマートフォン1トンから、約200〜300グラムの金が回収できるとされます。機種・世代・回収条件で大きく変わるため幅がありますが、天然鉱石(1トンあたり数グラム)の数十倍の濃度であることは確かで、これが都市鉱山が注目される理由です。
Q. 金の採掘で水銀が問題になるのはなぜ?
規制の届きにくい小規模・違法採掘で、砂金を集めるのに水銀が使われるためです。蒸発した水銀が作業者の健康と河川を汚染します。人為的な水銀汚染の主要な発生源のひとつとされています。大規模鉱山では管理されたシアン化法が主流です。
Q. 産金量が最も多い国は?
2024年は中国(377トン)が首位で、ロシア(310トン)、オーストラリア(284トン)が続きます(USGS)。ただし上位5か国を合わせても世界の約4割で、産地は比較的分散しています。
まとめ

金は、地球が新たに作り出せない金属です。だからこそ、どこで採れ、どれだけ残っているかという問いには、意味があります。
世界の産金は年間約3,280トン。中国を筆頭に世界各地に分散し、日本にも菱刈という世界最高品位の鉱山があります。地下の埋蔵量を年間採掘量で割れば約20年分ですが、それは枯渇までのカウントダウンではなく、価格と技術しだいで書き換えられる暫定値にすぎません。そして使い終えた機器のなかには、天然鉱石より濃い金が眠っています。
増やせず、消えず、世界中に薄く分かれて存在する。金が長く価値を保ってきた理由は、結局のところ、こうした物理的な事実に根ざしているのではないでしょうか。
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